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インプットしてきたことをアウトプットしていかなきゃいけないんじゃないの?

現場からオフィスまで、全社で展開する トヨタの自工程完結

現場からオフィスまで、全社で展開する トヨタの自工程完結―――リーダーになる人の仕事の進め方

現場からオフィスまで、全社で展開する トヨタの自工程完結―――リーダーになる人の仕事の進め方

あるアメリカ人家庭の、七面鳥料理の話です。
その家の娘は、「わが家の七面鳥料理のレシピでは、尻尾と頭はちょん切ってオーブンに入れる」と親に教えられていました。しかし、娘は疑問に感じたのです。どうして尻尾と頭をちょん切って入れるのか、と。
娘はお母さんに尋ねました。すると、お母さんは言いました。
「私にはわからないわ。あなたのおばあちゃんにそう教わったから、そうしているだけよ」
そこで娘は、おばあちゃんのところに聞きに行くことにしました。おばあちゃんは言いました。
「よくわからないわね。おそらくそうしたほうが、七面鳥の中に詰めた野菜やら何やらから出たガスがうまく抜けて、おいしくなるんじゃないのかしら」
娘はなるほど、と思いました。ガスがよく抜けるなんて、面白い。そこで娘は、ひいおばあちゃんにも聞きに行きました。ひいおばあちゃんは言いました。
「違うのよ。昔はわが家のオーブンは小さかったから、七面鳥が丸ごとオーブンに入らなかったの。だから、頭と尻尾を切ったのよ。オーブンに入るなら、切る必要なんかないわよ」(P114~P116)

これは、「現場からオフィスまで、全社で展開する トヨタの自工程完結」という本で紹介されていた話です。
著者は、トヨタにはたくさんの「七面鳥の話」が転がっていたと、そしておそらく日本の会社にも、たくさん転がっていると思うと述べています。
著者の思う通り、日本の会社で働く私も「七面鳥の話」に遭遇したことは何度もあります。

そのとき私は、次の3つのいずれかで対応してきました。

 ①意味のないことだと判断してやめる
 ②意味のないことかなと思いながらも、これまでそのやり方で問題がなかったのだからとそのままやり続ける
 ③自分なりに意味をこじつけてそのままやり続ける

上記の「七面鳥の話」でいえば、②はお母さんの対応、③はおばあちゃんの対応ということになるかと思います。
①ができれば一番いいのですが、実際には②や③で対応することがほとんどだったと思います。私の個人的な意見としては、③の間違った意味をこじつけてしまうことが一番やっかいではないかと思います。

トヨタの自工程完結という考え方がもたらすメリット

「七面鳥の話」では、最終的にレシピを考えたひいおばあちゃんに聞くことができたので、尻尾や頭をちょん切る必要はないと知ることができましたが、実際の仕事の現場では、前任者が既にいなかったり、その前任者もそのまた前任者から聞いただけでわからないなんてことがほとんどではないかなと思います。

こういったことをなくすメリットが「トヨタの自工程完結」という考え方にはあるとのことです。

自工程完結のポイント

「自工程完結」という考え方は、生産現場で生まれたようですが、それをスタッフ部門の仕事にも適用したところ、多くのメリットが得られたとのことです。 スタッフ部門の自工程完結のポイントは6つ

ポイント1:「目的・ゴール」をはっきりさせる
ポイント2:「最終的なアウトプットイメージ」を明確に描く
ポイント3:「プロセス/手順」をしっかりと考え、書き出す
ポイント4:次の「プロセス/手順」に進んでよいかを判断する基準を決める
ポイント5:正しい結果を導き出すために「必要なもの」を抜け・漏れなく出す
ポイント6:仕事を振り返り、得られる知見を伝承する

それぞれのポイントの詳細は本書を読んでいただきたいのですが、自工程完結という考え方を私が勝手に咀嚼してざっくり一文にすると、”仕事を「なぜ・どうして・どうなっていれば」が記載されたマニュアルに落とし込むこと”になるのかなと思います。
単なる手順書のようなマニュアルではなく、「なぜこの仕事をする必要があるのか」「どうしてこのような手順や方法でやるのか」「どうなっていればOKなのか」が記載されていることが重要なのだと思います。

なぜこの仕事をする必要があるのか

これはとても重要です。単に前の上司に言われたからやっているという仕事があった場合、その仕事はすでに今の上司は必要としていないかもしれません。

どうしてこのような手順や方法でやるのか

マニュアルには手順や方法が書いてあるはずです。しかし、どうしてその手順や方法でやるのかが書いてあるマニュアルは少ないのではないでしょうか。
まさに「七面鳥の話」で、レシピ(マニュアル)に”オーブンに丸ごと入らないので尻尾と頭をちょん切る”と書いてあれば、丸ごと入るオーブンで調理する場合には切る必要がないとわかるわけです。

”マニュアル通りにしかできない”なんてよく耳にする言葉ですが、これもそのマニュアルにはどうしてこうやるのかが書いてないからなのではないかと思います。どうしてが書いてないのでその通りやるしかないのです。どうしてが書いてあることにより、それ以外の手順やより良い方法を見つけたりすることができるのだと思います。

どうなっていればOKなのか

これが分かっていれば、仕事をした人は100%その仕事に自信を持つことができるようになるはずです。もし失敗したり問題が起きたりしたとしても、それは仕事をした人の責任ではなく、単にマニュアルのどうなっていればOKなのかが不十分であったというだけです。
そして、マニュアルを更新すれば次はより精度の高い仕事につながるはずです。

感想

これまで、タイトルに”トヨタ”と付く本を何冊も読んできましたが、本書はその中でもっとも事務系・スタッフ部門いわゆるホワイトカラーの仕事に焦点を当てて書かれた本ではないかと思います。
本書では自工程完結という考え方を説明するにあたり、著者の体験談が具体的かつ豊富に書かれておりとても参考になりました。

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現場からオフィスまで、全社で展開する トヨタの自工程完結―――リーダーになる人の仕事の進め方

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