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日本製造業起死回生の原価・収益管理術

日本製造業 起死回生の原価・収益管理術

日本製造業 起死回生の原価・収益管理術

一応私も日本の製造業の会社に勤めているので、本書を手に取りました。

日本の製造業の利益率は3%

著者は日本の製造業は海外の製造業に比べて製造原価が高く、利益を圧迫していると述べています。 日本の製造業の利益率がどのくらいかというデータが本書に載っていたので引用します。

実際、財務省が平成25年に発表した製造業の利益率の推移を見ると、大企業、中小企業とも長期的な低下傾向にあります。世界の主要国と比較しても、日本企業の利益率が3%であるのに対してアメリカは12%と大きく差をつけられてします。経営環境が日本に近いといわれるドイツでも、5%と日本を上回っています。(はじめに)


利益率3%、私は正直なところこの位が普通だと思っていました。しかし、海外と比べたら低かったのですね。実際、資源の乏しい日本の製造業においては、原材料や重油や石炭といった燃料など、輸入に頼らざる得ない部分が多いので仕方ないところもあるのでしょうか。

日本の製造業のIT化の遅れ

本書では、日本の低い利益率をあげるための原価・収益管理について企業の事例を用いて解説されているのですが、私がとても共感したのが日本の製造業のIT化の遅れに関する部分です。いくつか紹介します。

すべてがつながっていない

実際の工場では、さまざまな機械が使われていますが、それらの管理システムや通信規格が統一されていなければ、デジタルにすべてをシームレスに管理することができません。
具体的に説明すると、作業途中の製品が、生産ラインのどこにあってどのような状態であるかというデータを統合的に管理するシステムが必要です。 ところが、機械や設備のメーカーがバラバラで、データの接続すらできていない工場も多いのが日本の現状です。(P37)


著者の言うように、私が経験した工場も同じようにデータの接続すらできていませんでした。 機械とシステムをつなぐために人間が手入力し、システムとシステムをつなぐためにUSBなどの外部メモリを使用したり、最悪の場合は別のシステムから紙で出力されたもの見て人間が手入力するなんてことも実際にやっていました。
たしかに個々の機械は高機能なシステムを搭載し自動化されていましたが、あくまでも単体でのシステム化が進んでいるだけで、工場全体は一切つながってはいませんでした。

日本の製造業の現場ではシステムが馴染まない

日本の製造業の現場では、自分たちが最もやりやすく、最もよいと考えるそれぞれ違う方法を日々のカイゼン活動により確立しています。そのローカルな業務プロセスをシステムにあわせようとするERPの思想は、特に日本では馴染まなかったのでしょう。(P41)


同じものを作る工場なのに同じシステムを同じようには使えない。実際の業務をシステムに合わせてしまえばいいのかもしれませんが、それができないのが日本人なのでしょうか。
”自分たちで見つけたやり方がいい””これまでやってきたやり方がいい” そして結局、システムをそれぞれの工場用にカスタマイズすることになってしまう。カスタマイズできるのであればまだいいが、費用がかかるためカスタマイズせずシステムの使える部分だけ限定的に使うといった中途半端なシステム導入を進めてしまうなんてことも実際に起きているのだと思います。

システムは現場には関係ない

そもそも生産管理とは、経営陣や管理職のためのものなので、本来の業務にプラスして時間をかけてデータの入力や更新をしても、現場には何のメリットもありません。日本の製造業の現場の人間は、職人気質でものづくりには熱心ですが、逆にいえばものづくりと関係がないことには時間を使ってくれません。(P57)


これも実際に工場で働いていて実感しました。上記のシステムに合わせてしまえばいいというところにもつながるのですが、システムを使いこなせないから中途半端な運用になり、メリットも中途半端にしか受けられず結局意味のないものにしてしまう。
実際のところ、現場に何のメリットもないかどうかは、現場の人が集積されたデータに対してどれだけ向き合ってくれるかにもよると私は思うのですが、職人気質だからというより、単純に面倒だからという人も多いのかもしれません。

システムを担当する人間は現場を見る必要がある

生産管理システムを導入しようというシステム部門の担当者は、実際に生産現場で何が起きているかを自分の目で見て、手で体験してください。これは精神論で言っているわけではありません。現場を知っているか知らないかで、システム導入がうまくいくかどうかやシステムの予算そのものに影響が及ぶこともあるからです。(P193)


本当にこの通りだと思います。どのように使われるのか分かれなければ、どんなシステムを入れればいいのかもわかりませんし、余計な機能を付けて高いシステムを導入してしまうなんてことになりかねませんからね。

さいごに

システムは、機械などと違って目に見えて良い悪いが判断しずらいものだと思います。だからこそ、良し悪しをきちんと判断できる人を育てていかなければならないのではないかと思います。

本書は、製造業の会社に勤めている管理職の方にはぜひ読んでいただきたい一冊です。

日本製造業 起死回生の原価・収益管理術

日本製造業 起死回生の原価・収益管理術

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